『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ウソツキ
雑踏の中で互いの姿を視界に捉えたとき、高鳴る胸は奥深くにしまい込み、
今にも駆け出しそうな足はゆっくりゆっくり、だけど震えている。
嬉しくて逸る気持ちを押さえても、向かい合った瞬間、手を取り走り出す。
誰にも目の付かないところへ。
ここよりも静かなところへ。
二人きりになれる場所へ。
青年は少女の銀色の髪を撫で、少女は青年の胸元へ頬を寄せる。
会えなかった時間を埋める、至福のとき。
互いに目を合わせ、近づくくちびる。
これがどんなに罪深いことなのか。
二人は知っている。
けれど。
その顔も、髪も、手も、くちびるも、ぬくもりも。
手放したくない。
二人の心の中は一緒なのに、口から出る言葉は冷たい。
「貴方を殺すために来ました。」
「そんなこと、できないくせに。」
ウソツキ、と耳元で囁かれ、彼女はくすりと笑う。
「このまま、君と逃げてしまおうか。」
「…貴方にそれができますか?」
ウソツキ、と呟いた声は夜の闇に消えてしまった。
胸元に、こつんと額を寄せる。
背中に回されている青年の手が、強く優しく抱きしめる。
涙が頬を伝い落ちた。
「ウソツキ。」
もう一度、呟いた。
fin
【 テキストメニュー 】 【 ト リ ソ ラ TOP 】