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目の前の大男の後姿を見て、リズは思わず吹き出した。
ぴょこんと跳ねた髪の毛がゆらゆら揺れている。
「どうした?」
リズの笑う声を聞いて、レーグが振り返る。
「レーグ、寝ぐせ、ついてる…!」
彼女からしてみれば、褐色の肌に筋肉質の無口な大男が、頭の上に寝癖だなんておかしくてたまらない。
というよりは、普段の彼からは想像できないほどの可愛らしさ、そのギャップが良いのかもしれない。
言われてから気が付いた、というような様子で、レーグは自分の頭を触れた。
「…変か?」
身体に傷がついても気にしないような男だから、髪型には頓着しないのだろうか。
いつもうしろにひとつに結わえているだけである。
リズが笑う。
「おもしろいよ。」
なるほど、と妙な納得をしたレーグは、リズの目の前で髪をほどき始めた。
緩くウェーブのかかった長い髪がぱさりと広がる。
レーグが髪をほどいたところ、初めて見た。
その貴重なシーンを目撃したリズは、その姿に目が釘付けになってしまった。
想い人の思いがけない一面に、心臓も波打つ。
「なんか、感じ違うね。」
えへへ、と照れ笑いするリズに「?」という顔をするレーグ。
戦うことを生きがいとしているボルダンは、色恋沙汰に対しては無関心な節がある――それはレーグだけ?――ので、リズのおかしな様子も別に気にしない。
手のひらで何度もなでつけて、また大雑把に髪をまとめようとした。
「あ、待って!」
その動作をリズが止める。
ぴたりとレーグの手が止まる。
「なんだ?」
「あたしにやらせて。…ほら、自分でやるよりは良いよ、絶対!」
好きな人の髪を梳かすことができる、と思いついたリズがレーグを説き伏せる。
そうか、とあっさり頷いたレーグは、身を屈めて背を向けた。
嬉しさを隠し切れないリズは、頬を紅潮させながら、いそいそと櫛を取り出した。
さらさらと往復する櫛。
レーグの髪は、ふわふわしていて触り心地が気持ち良かった。
丁寧に櫛を動かすリズはうっとりとした表情で言う。
「レーグの髪、きれいだね。」
「そうか?」
「あたしはクセ毛だから、羨ましいなぁ。」
「リズは髪の色が良い。綺麗だと思う。」
「!!」
突然の告白に、持っていた櫛をぼとりと落とす。
「…どうかしたか?」
「いや、な、なんでも…ごめんね。」
あはは、と乾いた笑いを漏らすも、リズの心は嬉しさでいっぱいだった。
レーグから戦闘の面で褒められることはごくたまにあるものの、見た目の面でそんな言葉をかけられたのは初めてだった。
リズがこんなにもどきどきしているのに、目の前に座るレーグは普段通りの様子だ。
彼にとっては何気ない一言だったんだろうが、それでも良い。
上機嫌のリズは、レーグの髪をみつあみに仕上げた。
それを見たチャカが盛大に吹いたのは、その後のこと。
fin