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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 Shall we Dance? 

レヴィンの笛の音が、夜の闇の中に溶けてゆく。
その音を誘うのは、軽やかに跳ねるシルヴィアの舞だった。
ささやかな宴も終わりに近づいてきた頃に始まったそれは、
酔った頭を醒ますには心地良い笛と鈴の音色だった。
腕や足のリングに付いた鈴は、シルヴィアの動きに合わせて涼しげな音を奏でる。
笛の音に合わせて踊るシルヴィアの姿は、見る者全ての目を釘付けにした。

「綺麗ね…。」
女性たちは、うっとりとその幻想的な光景を見て溜め息をつく。
男性たちは、シルヴィアのしなやかな動きに感嘆を漏らす。

シルヴィアは、踊りながらちらりと観客へ視線を向ける。
隣り合って座る男女の表情が幸せそうなのは、
ただこの笛の音、舞のせいだけではないだろうことが分かる。
視線を漂わせる。

(……あ。)
見つけた。
一つのテーブルを囲む、三人の男性の姿。
その中にある、愛しい一人の姿を。

アレクは、眩しいものでも見るかのように眼を細めてシルヴィアを見ていた。

その姿を見ただけで、シルヴィアの心までもが踊りだす。
部屋中に響く鈴の音は、心の中の喜ぶ声だった。

 

やがて、笛の音が止む。
しゃらん、と余韻を残す鈴の音と共にシルヴィアの舞も終わった。
それと同時に、今度は部屋中には拍手が鳴り響いた。
汗で額に張り付いた髪をかき分けながら、シルヴィアは嬉しそうに顔を上げた。
視線の先にいるアレクも、立ち上がり、嬉しそうな顔で拍手を送っている。
手を振ってそれに応えると、酔ったアーダンが冷やかしているのが見えた。

再び、レヴィンの笛の音が辺りに響く。
今度の曲調は、先ほどのものとはまた違ったもの。
最初に部屋の中央に躍り出たのは、一組の男女。
それを合図に、一組、また一組と男女が躍り出る。
いつしか、そこは恋人たちの踊る空間に変わっていた。

シルヴィアはその場から離れてアレクの元へ駆け寄った。
「アレク!」
「シルヴィア!」
笑顔で迎えてくれた彼は、お疲れ、と労いの言葉をかけた。
その笑顔と一言で、踊りで消耗した体力が一気に戻ってくる。
「あたしの踊り、どうだった?」
シルヴィアは甘えるようにアレクの腕にしがみつき、顔を見上げた。
「今日も良かったよ。見ていてほっとする。」
愛しい人の言葉ほど、嬉しいものはない。
「えへへ、ありがと!」
胸元へ頬をすり寄せると、アレクは髪を優しく撫でてくれた。

 

恋人たちは優雅に踊る。
互いに向き合い、手を取り合い、くるくると舞い踊る。
まるで語り合っているかのように楽しげに。
先ほどまで同じテーブルにいたアーダンも、酔った勢いで男同士で踊っている。
その様子を見て、アレクとシルヴィアは大笑いした。

しばらく経って、アレクが口を開く。
「俺たちも、踊ってこようか。」
「え…。」
いいよ、とシルヴィアは笑顔で答えた。
「あたし、貴族さまの踊りなんて知らないもん。踊れないよ。」
人と踊るためではなく、生きていくために見せる踊りしか知らないシルヴィアは笑う。
その笑顔は、少しだけ寂しげな色を滲ませている。

「じゃなくて。」
アレクがシルヴィアの顔を覗き込む。
至近距離にあるアレクの顔に、一瞬どきりとする。
「ここじゃあないところ。二人きりで踊れるところで。俺が教えてやるよ。」
そう言うと、アレクは子供っぽくウィンクしてみせた。
「ほえ。」
ぱちぱちと目を瞬かせるシルヴィアの手を取ったアレクは、部屋を抜け出した。

 

二人が辿り着いた場所は、踊るには狭すぎるバルコニー。
しかし、二人で向き合い手を取り合って踊るには充分すぎる場所だった。
ちょうど下の部屋で奏でられている笛の音が、バルコニーまで聴こえてくる。
「ここなら踊れるな。」
「ちょ、アレク…。」
引いていたシルヴィアの手を離し、向かい合うと、アレクは目の前に片膝をついた。
「!???」
どぎまぎするシルヴィアをよそに、アレクは続ける。
彼女の小さな手を取った。
「俺と踊ってくれますか?」
いつもの明るい調子とは違う、それこそ貴族のような振る舞いに、シルヴィアの心臓はどきどきと波打った。
「…よ、よろしく、お願いします…。」
「オーケー!」
かと思えば、やはりいつもの調子のアレクに戻る。
シルヴィアの手を取り、もう片方の手は彼女の腰に回した。
向かい合い、手を取り合い、見つめ合うその距離に、シルヴィアの鼓動は早まる。
「一人で踊るのも良いけど、二人だともっと楽しいぜ。」
「アレク…。」
満面の笑みを浮かべるアレクに、シルヴィアの緊張も解けた。

闇に溶けてゆく笛の音。
その音を聴きながら、二人の夜はいつまでも続いていた。

 

fin



あとがき↓

アレシルって書きやすいかも。新発見です。

しかし、二人とも会話が難しいです。
話し言葉に、どうしたら“らしさ”を出せるのでしょうか。



08.03.05

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