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太陽の光を反射させた水面がきらきら輝き、小さな飛沫が舞い上がる。
初めて見る海は、とても広くどこまでも青く澄んでおり、
なびく金色の髪を押さえながら、ルインは吹き抜けてゆく潮風の香りを楽しんでいた。
「あ、セラさん、魚が泳いでます!」
水面下に見えた魚の群れが、黒い影になって泳いでいる。
ルインはそれを指差して目を輝かせているが、隣にいるセラは普段通りの態度だった。
ああ、などと答える素振りもなく、船の手摺に背をもたれている。
それでも、ルインもお構いなしに初めての海を堪能していた。
二人が乗っているのは、エンシャントからリベルダムへ発つ船。
最短で向かおうという、セラの意見で船を利用することになった。
もちろん、初めて船を目にした時も、やはりルインは感嘆の声を漏らしていた。
セラは、ルインの横顔をちらりと見やった。
この少女と出会い、冒険者として行動を共にするようになって、まだ数日。
その数日間で、セラは彼女のことを「大人しい少女」と思っていた。
良く言えば温厚、悪く言えば世間知らずだが、大人びた印象を持っていた。
それは、彼女の出身の影響が大きいのだろう。
『隠れ里・ミイス』のことは、親友でもありルインの実兄でもあるロイから聞いていた。
代々、闇の神器を守り続けてきた一族に生まれた少女は、外界に出たことがほとんどなく、
兄のロイと共に、神器の守護者として育てられてきた。
大人たちに囲まれた中での生活で、自然と身に付き、または教育されてきたのだろう。
そんな少女が、初めて見る海に心を躍らせはしゃいでいる姿に、セラは少々驚いた。
(歳相応の顔をするんだな。)
(というよりはむしろ、小さい子供と対して変わらないな。)
思わず小さく噴き出したセラに、振り返ったルインが小首をかしげた。
「どうかしましたか?セラさん。」
相手と対峙すると、また大人びた態度になる。
そのギャップに、再び噴き出しそうになるのを堪え、なんでもない、とだけ答えた。
「それよりも、お前は海を見るのが初めてなのだな。」
はい、とルインがにっこり笑う。
「ずっと内陸で育ったので、海を見るのは、今日が初めてです。
本で読んだり人から聞いただけだったんですが、実際見てみると、とても大きいんですね。」
海を見つめるルインの瞳はきらきら輝き、本当に小さい子供のようだ。
セラもまた、彼女の意外な一面を垣間見て、これから先の冒険のことを思い頬を緩ませたのだった。
fin