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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 コードの距離 

すれ違う人と一言二言挨拶を交わしながら廊下を歩く。
その速度は目的地の扉が近づくたびに速くなり、同時に微かに心が弾んでゆくのを感じた。

扉の前に立つ。
変に気にされるのも嫌なので、呼吸を整え、前髪を整え、制服のリボンを直す。
弾んだ心だけは、いつも抑えることができない。
この扉の向こうに広がっている光景を思い描きながら、扉を開けた。

扉の向こうに広がっていた光景は、およそ数ヶ月ぶりのもの。
窓際の席に座っている一人の少年の後姿がそこにあった。
窓から差し込む陽の光に照らされた蒼髪が眩しい。
「………。」
抑えることができなかった心は、余計に速さを増した。
ゆっくりと扉を閉めて、次のシーンを思い描く。

少年の傍へと歩を進める。
遠くから見ていただけでは気が付かなかったが、少年の耳には白いイヤホンが納まっていた。
開け放たれた窓からは風が入り込み、外からは部活動をしている生徒達の声が聞こえているのに。
イヤホンからは微かに音楽が漏れている。
――彼の好きな曲だ。
瞬間的にそう思った。

「…お疲れさま。」
少年の前の机に鞄を置いて座り、声を掛ける。
ずっと音楽と手元の本に熱中していたのか、少年は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。
「ああイシュタル、お疲れさま。」
少年の微笑みに心が温かくなり、イシュタルも自然と笑みがこぼれる。
「何を聴いてたの?セリス。」
少年――セリスは右耳み納まっていたイヤホンを外し、イシュタルへと向けた。
「一緒に聴いてみる?」
どきり、と心臓が跳ねる。
「…ええ、ありがとう。」
座ってる椅子を、セリスの机へと近づける。
片方のイヤホンを受け取ると、そのまま右耳へと納めた。
セリスが小さなプレイヤーを操作する。
音楽が始まった。

「…他のみんなは、まだ来ていないのね。」
「みんなは掃除当番だって言ってた。」
「そう…。」
それ以上は、何も言えなかった。
セリスの好きな音楽に集中しているのもある、けど、理由はもっと別。

一つのプレイヤーから伸びたコード。
そのコードは、片方はセリスへ、もう片方はイシュタルへ。
ほんの数十センチの間隔で向かい合っている二人。
イシュタルは、そっと目の前のセリスの様子を窺う。
蒼い前髪はさらさらと流れ、長い睫毛が血色の良い肌に影を落としている。
伏目がちの蒼い瞳は、手元の本へと落とされている。

他の生徒たちがいない、数ヶ月に一度の、二人きりになれるこの瞬間。
この放課後が、イシュタルにとっては幸せな時間である。

高鳴る胸の鼓動を抑えるかのように、イシュタルは目を閉じた。
残り僅かなこの時間を、愛しむかのように。

 

fin



あとがき↓

現代パラレルのセリス←イシュタルでした。
説明不足気味な文章なので、ここで補足をば…(なんという)

・セリスとイシュタルは高校生(たぶん、3年生)
・セリスは生徒会長、イシュタルは副会長
・この日は生徒会会議
・他の役員は掃除当番でまだ来てない
・イシュタルがセリスに片思い



07.10.11

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