[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
開け放たれた窓からは、小鳥のさえずりと木々のざわめきが聞こえる。
吹き込んできた清かな風が部屋の中を通り過ぎていった。
その風にのって馴染みのある甘い香りが鼻先をかすめた瞬間、サフォークはゆっくりと目を開いた。
視界に入ってきたのは、白いシーツに。
枕元に伸ばされた自分の腕。
かすかに漂うのは、枕からの残り香だろう。
香りの主の姿が見えないのに気が付き、サフォークは上半身を起こした。
「…ザギヴ…?」
上品に設えられた広い部屋を見渡すが、彼女の姿はどこにも見当たらない。
その時、部屋の中に扉を叩く音が響き渡った。
サフォークが返事をする前に扉が開く。
「あら、起きてたのね。おはよう、サフォーク。」
中に入ってきたのは、目当ての人物ザギヴだった。
「…おはよう。」
寝癖のついた金髪を掻きながらのサフォークに、ザギヴは吹き出した。
「相変わらず、早く起きるのは苦手なのね。
私が起きても、まったく気づいていないんですもの。」
ザギヴはベッド脇に来ると、青年の額に口付けた。
「待って。」
「あっ…。」
離れようとしたザギヴの腕を捕らえ、サフォークは引き寄せた。
体勢を崩したザギヴは、そのまま青年の腕の中へと収まった。
「…どうしたの?」
「…目が覚めたら君の姿がなかったから、少し驚いた。」
くすくすと、胸の中でザギヴが笑う。
「私はあなたの傍から離れないわよ?」
「うん、分かってる。」
でも、とサフォークはザギヴの華奢な身体を抱きしめながら言う。
「朝起きて、いるはずの君がいなくて、君の匂いだけが残ってると、とてもせつなくなるよ。」
「………サフォーク。」
じゃあ、とザギヴはサフォークの顔を見上げた。
普段、部下達の前では決して見せない、サフォークの前でだけする、少女のように可愛らしい表情だ。
「これからは、もっと早く起きることね。」
窓から入り込んできた優しい風が、二人の間をすり抜けて行く。
サフォークの鼻先を、ザギヴの甘い香りがかすめていった。
fin