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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 絡みつく想い 

薄暗い階段を上り辿り着いた場所は、抜けるような青空の見える屋上だった。
立ち止まったその場で広い屋上を見渡し、ひとり佇む少女の後ろ姿を見つける。
探していた人が見つかり安堵の息を漏らすと、セリスはその少女へと足を向けた。

光を浴びた銀糸は、流れるような美しさで風に靡いていた。
風は草木をも揺らし、華奢な少女を攫って行くかのように吹き荒れている。
それでも少女はしっかりと地に足をつけて、遠くの景色を見つめていた。

一歩一歩近づくごとに、心臓は締め付けられたように苦しくなる。
その眼差しの先に何があるか、セリスは知っている。
少女の愛する人が、その先の地にいることを。

こつこつと石畳を踏む足音は、風に消されていた。
セリスは少女の真後ろで立ち止まった。
眩しいものを見ているかのように、目を細めてその後ろ姿を眺める。
少女の長い髪が、無造作に目の前を流れていた。

手を伸ばせば、その銀糸に触れ、少女を己の胸に包み込むことができる距離。
それなのに、まるで見えない厚い壁が二人の間にあるかのように、
セリスは自らの手を伸ばすことが出来なかった。
ぐっと拳を握り、代わりに、セリスは穏やかな声で呼びかけた。
「……ユリア。」
名を呼ばれた少女――ユリアはびくりと振り向いたが、その表情はすぐに笑顔に変わった。
「お兄様。」
ちくりと痛む胸を抑えながら、セリスはユリアの横に並んだ。
そして、手に持っていた一通の手紙を見せた。
「手紙が届いていたよ。」
みるみるうちに、ユリアの表情が変わっていく。
目を輝かせ、小さく喜びの声を漏らすと、セリスから手紙を受け取った。
再び、ちくりと胸が痛む。
「ありがとう、お兄様。」
ユリアは、まるで花のように可愛らしい笑みを向けた。
「…どういたしまして。」
作られた微笑はぎこちなく、胸の痛みは止まらない。
自分に向けられたユリアの嬉しそうな笑顔は、手紙の主がさせたものだ。
頬がほんのりと紅く色づいているのも、大事そうに胸に抱いている手紙のせいだ。

「…今日は風が強い。中に戻ろう、ユリア。」
「はい、そうですね。」
セリスが先に行くよう促すと、それに素直に従ったユリアの長い髪が鼻先を掠めた。
風に煽られて靡く銀糸は、セリスの心を弄ぶかのように輝く。
報われない想いと分かっているのに、それは心に絡みつき解けることはない。
いつまでも、セリスはその後を追っている。
今すぐに手を伸ばし、その銀糸に触れ、ユリアを抱きしめ、そして―――。
「…?お兄様、どうかしましたか?」
はっと我に返ったとき、自分が無意識に手を伸ばそうとしているのに気が付いた。
「…あ。ああ、いや…。」
その手を慌てて隠し、セリスはかぶりを振った。
ユリアはきょとんとした表情で小首をかしげている。
「ごめん、なんでもないよ。行こう。」
セリスが微笑むと、ユリアも安心したように笑みを見せ、踵を返した。
ふわりと無邪気に、その煌く銀糸を靡かせながら。

 

fin



あとがき↓

梅之助は、セリユリストでした。(←過去形っていうのが…(´・ω・`))
でも今は、報われない想いを抱いているせつない二人に萌えてます。
どちらかが片方に片思いしてるようなシチュエーションが好きです、この二人。



07.06.07

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