忍者ブログ
『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

 knight and princess 1 

バーハラの戦いから敗れ、この地に逃げ延びて、一体どのくらいの年月が過ぎたのだろうか。
あの戦いで受けた傷は、心身共に、この世の何よりも比べられないほど大きく、
この世の何を以ってしても癒されることはないだろうと思う。

しかし、希望はある。

戦い敗れた者達の光を受け継ぐ者達への、大きな希望―――。



knight and princess ~ミデェールとエーディン~

 

鬱蒼と生い茂った新緑が溢れる森。
その中の、空と太陽が見える開けた場所に、一人の青年と一人の少年の姿があった。
遠くの方から小鳥のさえずりだけが聴こえてくる、静寂に包まれた場面に二人はいた。
「そう、そのまま…目の前にある的をよく見て…。」
「………。」
「放て!」
威勢の良い一声のすぐ後に放たれた矢は、緩やかなカーブを描いて飛んでいった。
そして、先にある大きな木の幹に吊り下げられた的の、中心から少し離れた場所に、音を立てて突き刺さった。
「あぁ~…外れちゃった…。」
残念そうに呟いたのは、矢を放った少年。
「いえ、でも、昨日に比べると随分と上達しましたよ。」
少年を穏やかな口調で制したのは、森の新緑と同じ色の髪を持った青年だった。
「でも、何度やっても真ん中に当たらないよ。僕、才能ないのかなぁ…。」
しゅんと肩を落とした少年に、青年はにっこりと微笑んでみせる。
「レスター様の伯母上も父上も、最初はみなそうでした。エーディン様だってそうでしたよ。」
「…父上も、母上も?」
少年がゆっくりと顔を上げる。
ええ、と笑みを浮かべながら、少年――レスターの前にしゃがみ込み、視線を合わせた。
レスターの大きな青い瞳が、青年の瞳と重なった。
「レスター様は、聖弓ウルの血と弓の名手と言われたジャムカ様の血を受け継いでおられます。だから必ず、一生懸命練習していればすぐにお強くなられるでしょう。」
青年の瞳と言葉に、不安気な表情を見せていたレスターの顔にぱっと笑顔が戻った。
「…うん、僕、がんばるよ!だからもっと教えて!ミデェール!」
そう言うや否や、すぐに弓矢を構えたレスターの姿を、青年――ミデェールは目を細めて見つめていた。

(あの戦いから、もう三年も経ったのか…。)
目を閉じると、まるで昨日のことのように鮮やかな記憶が蘇る。
一面の、赤。
手のひらには汗が滲んできて、思わず拳をきつく握り締めた。
忘れたくても忘れられず、忌まわしい記憶は何年経っても精神を追い詰める。

身動きができなくなるような感覚に陥るが、それをレスターの明るい声が破った。
「ミデェール?早く続きやろうよ!」
はっと目を見開いたミデェールの額を、一筋の汗が流れ落ちた。
眩い太陽の光に、思わず目が霞む。
「?」
レスターはきょとんとした顔で見つめている。
ミデェールは汗を拭うと、すぐにいつものように笑みを浮かべた。
「すみません、さぁ、始めましょうか。」
そして、何事もなかったかのように、再び弓の稽古を始めた。

 

ミデェールたちは、イザークの大地を北へと進みながら、小さな村を転々としていた。
今は、とある村の教会の空き部屋を借りて生活している。
イザークの人々はかつての自国の王の忘れ形見・シャナンを大変慕っており、
アルヴィスの世になって、反逆者と言われるセリスたちに追っ手が差し向けられていても、
この地を治めているダナンよりもシャナンを信じ、希望を信じ、今まで守り通してくれていた。

「このままずっと北に行けば、ティルナノグという隠れ里があるらしい。」
夕食を摂っている子供達から少し離れたテーブルで、ミデェールとオイフェ、シャナンは地図を広げていた。
「シャナン様、それは確かな情報ですか?」
ミデェールが尋ねると、シャナンはこくりと頷き、イザーク領地図の北側を指差した。
「隠れ里だから具体的な位置まではわからないけど…、この辺りだって。」
その指差した場所を見て、ふむと一息ついたのはオイフェだった。
「ここからだと…五日以上はかかる距離だね。」
「だからまずは、ここから一番近い村へ行って、また情報を集めよう。」
あれこれと話をしている三人の元に、エーディンが近づいてきた。
それに気がついたミデェールが、椅子から立ち上がる。
「そろそろ、子供達を寝かせてきます。」
「わかりました。」
「さ、みんな、ミデェールとオイフェとシャナンに、おやすみのキスをしてね。」
子供達は口々に可愛らしい返事をすると、三人の頬に順番にキスをして、部屋を出て行った。



next



07.05.22

拍手

PR
ダイアリー
更新履歴
雑記(拍手&メルフォRe:)
アンケート
テキスト
FE 聖戦の系譜
FE 覚醒
Zill O'll
FINAL FANTASY 7
お題系
きまぐれジャンル
リンク
リンクページ

素材
●Photo : 戦場に猫
●Material : web*citron
●Template : hanamaru.
●Banner : Sky Ruins
メールフォーム
何かありましたら、どうぞ。お名前は入れなくても届きます。お返事は「雑記」ページにて*
忍者ブログ [PR]