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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 ベッド、ひとつ 

静かな部屋の中で、紙の上を走る羽ペンの音が響く。
キュアンは時々その手を止め、書類を見て唸り、再びペンを走らせる。
その繰り返しが、何時間も続いていた。
政務に追われる毎日で、一日のほとんどをこの執務室で書類に囲まれて過ごしていた。

ようやく、その日最後の最後の書類にサインをする頃、すっかり夜も更けていた。

書記官達を下がらせ、部屋に一人きりになり、キュアンは緊張の糸が解けたように椅子に沈み込んだ。
大きな溜め息をついてから、自分も部屋を出ようと椅子に手を掛けたとき。
「おとうさま!」
ばたん、と大きな音を立てて、愛娘が部屋に入ってきた。
「アルテナ。まだ起きていたのか?」
キュアンは、自分の膝に飛びついてきた愛娘を抱きとめた。
いつもならもう寝ている時間だというのに、娘は明るい笑顔を見せている。
「お父様におやすみなさいを言うまで寝ないって、きかないの。」
アルテナの後に続き、エスリンが銀の盆を持って苦笑しながら入ってきた。
今日この日、久し振りに見る妻と娘の姿に、思わず頬が緩んでしまう。
「エスリン。」
「お疲れさま、あなた。お腹空いてるでしょう?」
エスリンはにっこり微笑むと、手に持っていた盆を机に置き、お茶を淹れ始めた。
用意された焼き菓子と紅茶の甘い香りが鼻をくすぐる。
娘を膝の上に座らせ、キュアンはエスリンからカップを受け取った。
「ありがとう。頂くよ。」
暖かい紅茶をひとくち口に含むと、ほうと息を漏らした。

「おとうさま、アルテナね、寝る前にご本を読んでほしいの。」
膝の上に座っている娘の大きな目が、見上げて言う。
「アルテナ、お父様は疲れていらっしゃるのよ。」
エスリンが困ったように娘をたしなめると、アルテナはつんと唇を尖らせる。
「だって、おとうさまお仕事ばっかりで、遊んでくれないんだもの。」
顔は自分にそっくりだが性格はエスリンにそっくりだな、とキュアンは密かに微笑んだ。
娘のお転婆振りに手を焼いている妻にこんなことを言うと、怒られてしまうので本人の前では言えない。
代わりにキュアンは娘を抱き上げた。
「わかった、アルテナ。一緒に本を読もうか。」
「ほんと?」
アルテナは目を輝かせた。
「あなた。お疲れではないですか?」
エスリンは心配そうにキュアンの顔を見つめる。
そんな妻を安心させるかのように、キュアンは優しく言った。
「平気だよ。確かに最近、アルテナと一緒にいることが少ないからね。」
アルテナは普段、母親のエスリンやフィン、乳母たちと遊んでいる。
その姿を窓から眺めては、微笑ましく思うものの、父親として焦る部分も多少はあった。
きっと、エスリンもそのことを薄々感じ取ったのだろう。
アルテナの頭を撫でながら、苦笑して言った。
「…わかりました。では、アルテナをお願いしますね。」

 

茶器を載せた盆を片付けた後、エスリンは気になってアルテナの部屋を覗いてみた。
「………。」
そっと扉を開けて見た先には、ランプの光も付けっぱなしで、ひとつのベッドに眠る二つの影。
すやすやと規則正しく寝息を立てているのは、アルテナとキュアンだった。
本を読んでいる間に、二人とも眠ってしまったのだろう。
エスリンは思わず笑みをこぼし、部屋の中に入って後ろ手で扉を閉めた。
音を立てないようにそろそろと近づき、二人の寝顔を見下ろす。
娘の大きな瞳は長い睫毛に守られながら閉ざされている。
その無邪気な表情が、隣で寝ている夫とそっくりなのが可笑しくて堪らない。
キュアンは、娘を大事そうに包み込むようにして眠っていた。

いつも政務に追われ、娘との時間がなかなか取れない夫。
そのことを顔には出さないけれど、本当はとても気にしていることを妻は知っていた。
アルテナが寝入った頃に仕事を終え、自分が寝る前にアルテナの部屋へ様子を見に寄る。
娘の可愛らしい寝顔に頬を緩めるキュアンの表情は、幸せそうだけどどこか寂しげだった。
しかし、今この寝顔はとても安らかで、まるで子供のようだ。

(………わたしもここで寝ちゃおうかしら。)
親子三人で、ひとつのベッドで眠るなんて、初めてのことだ。
うきうきとした表情で、エスリンはアルテナのベッドに入り込んだ。
エスリンは、アルテナのふっくらとした頬にキスをした。
そして、少しだけ身を乗り出して、キュアンの頬にかかった髪を優しく払いのけて。
「おやすみなさい、キュアン。」
愛しそうに目を細め、呟きながら、その頬にキスをした。

 

fin



あとがき↓

三角って、こういう三角(頭の位置的に▽←こんな感じ)でも良いんじゃない?(イインダヨ!)
ということで、キュエスアルテナ親子の団欒。

キュエスアルテナ親子の団欒、別バージョン↓
エスリン「あなた、アルテナ!今日も親子三人で川の字になって寝ましょう♪」
キュアン「よし!じゃあ、エスリンはさんずいを頼む!アルテナは真ん中の□だ!(ウキウキ)」
エスリン「その河じゃねーよ、てかさんずいって物理的にムリだろ!」

・・・何、この、昭和のギャグ!!(戦慄)



07.04.22

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