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リズ達は怪物退治の依頼を受け、乙女の鏡を目指していた。
その場所は、友人でもあり義弟でもあるエストが頻繁に調査に訪れている場所でもある。
もし彼に、義弟に何かあったらと思い、エンシャントのギルドを飛び出すように出てきた。
エスト曰く、乙女の鏡という場所には古代文明が隠されているらしい。
好奇心が旺盛で大陸でも有名な考古学者である彼は、
ロストールのリューガ邸には滅多に帰らず、日々古代文明の研究を続けている。
義兄レムオンは、エストに対し、特に問題が無いだろうと理解を示していると聞いた。
確かに、エストの研究成果は、帝国のあのトンガリ宰相も一目置いているほど。
しかし、問題なのは研究成果うんぬんではない。
(モンスターに襲われて大怪我でもしたら、どうするの!?)
リズはそのことで頭がいっぱいだった。
エンシャントから乙女の鏡まで、約一日かかる。
エストの無事を祈りながら、足早に向かった。
息を切らせて、いつもエストがいる、湖の畔に向かうと。
「あれ?リズ!こんなところで会うなんて、奇遇だね。」
太陽の光に照らされて、血色が良く見えるエストの顔にさわやかな笑顔が映える。
肩で息をしていたリズは、とりあえず、脱力した。
「………………。」
がっくりとうなだれたリズを見て、エストは小首を傾げる。
「どうしたの?そんなに息を切らせて。」
頭は良いが、どこか抜けたところがある義弟に調子が狂う。
後ろでは、弟のチャカたちが笑っていた。
大きな溜め息をついてから、リズは顔を上げた。
「あのねー、昨日、エンシャントのギルドで、ここの怪物退治を依頼されたの。」
でも、とエストの頭から足までをチェックしてから。
「その様子だと、どこも怪我してないみたいだし、無事だったみたいだね。」
ほっと胸を撫で下ろした。
しかし、次のエストの発言にはまた脱力せざるを得なかった。
「怪物?ほんと?それは気をつけなくっちゃね。」
「そうそう、リズ、この間誕生日だったんだって?」
湖を覗き込んでいるリズに、隣にいるエストが尋ねた。
研究の途中経過を報告したい、とエストが言ったので、リズ達は暫しの休息を取っていた。
「そうだよ。あ、最近家に帰ったんだ?」
エストにその話をしたのは、レムオンかセバスチャンしかいない。
ということは、エストは久し振りにリューガ邸に帰ったらしいことが分かる。
「ごめんね、参加できなくて。」
「いいよ。エストだって忙しいんだし。」
気にしなくていーよ、と笑うとエストもにっこりと微笑む。
「でもね、僕、リズにプレゼントを用意したんだよ。」
「え?」
エストはごそごそと懐を探ると、丸めた手を伸ばしてきた。
「はい、これ。」
「え、え、何だろう?」
ちょっとだけどきどきしながら、手渡された品を見てみると。
エメラルド色に輝く小さな石がついた、ブレスレットだった。
陽の光にかざしてみると、エメラルド色はきらきらと表情を変える。
「…綺麗な緑色だねー。」
リズが感激した様子で声をあげると、エストも満足そうに言った。
「チェーンは僕が付けたんだ。石は、発掘作業中に見つけたんだよ。」
えっ、と思わず驚きの声をあげて、エストを見やる。
「いいの!?なんかこれ、歴史的にスゴイ物なんじゃ…。」
思わずリズが恐縮しても、エストは涼やかに笑う。
「いいんだ。その緑色を見て、リズの瞳の色に似てるなと思って。
だから、リズにあげようと思ったんだ。お守りにしてね。」
リズはぽかんとした表情で新緑の瞳を瞬かせた。
エストは相変わらず、にっこり微笑んでいる。
手のひらの上にあるブレスレットと、エストの顔を交互に見やる。
「…ありがと、エスト。これ、大事にするよ。」
「そうだね。リズはいつも危険と隣り合わせでしょ?きっと守ってくれるよ。」
(頭が良いけど、どこか抜けたところがあって、それでも………。)
大切な義弟のエストの優しさを知り、リズはブレスレットをそっと胸に抱いた。
fin