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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 安らぎの花 

自室の扉を開けた瞬間目に飛び込んできたものに、レムオンは眉根を寄せた。
色とりどりに咲き乱れている小さな花が、花瓶に活けられて書き物机の上に置かれていた。
様々な装飾品が飾られている部屋内に、それだけが妙に場にそぐわず、しかし逆に存在感を示している。
「あれは…?」
半ば独り言のように、怪訝そうに呟いたそれを、有能な執事は聞き逃さなかった。
「はい。それは、ルイン様がレムオン様にと。」
まるで問われるのを待っていたかのような、少し弾んだ口振り。
「ルインが来たのか?」
はい、と答えながら執事・セバスチャンは陶器の器に暖かい紅茶を注いでいる。
「ほんの数刻前になります。仕事があるとのことで、すぐに発たれました。」
長椅子に座るのと同時に、目の前の円卓に紅茶が差し出された。
器を手に取り、温かい紅茶に口を付けると、ようやくほっとした心地がする。
「あまり無理をなさらないように、とも仰ってましたよ。」
顔を上げると、セバスチャンはいつもと変らない微笑みを浮かべている。
「あいつが?」
義妹の姿を思い浮かべながら、ふんと小さく鼻で笑った。

一時の休みを終えると、セバスチャンは空いた茶器を持って部屋を後にした。
レムオンは大きな溜め息をつくと、書き物机の椅子に腰掛けた。
机の上に書類が小山のように積まれている。
執務室で捌き切れなかった書類を持ち込んできたものだ。
襟元を緩めながら、それらの書類ひとつひとつに目を通し始めた。

カチカチと時を刻む音だけが響く、静かな部屋。
たまに眉間を押さえながら、椅子の背に深くもたれる。
毎日が同じことの繰り返しだが、疲れたとは言っていられない。
ほんの少しだけ一息つくと、再び書類に目を向けた。

その時。
後ろの窓からふわりと清かな風が吹き込んできた。
書類が飛ばされないようにと押さえたとき、視界の端にちらつく色を見つけた。

風にあおられ、愛らしく揺れる小さな花たち。
ほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。

仕事に忙殺される毎日で、義妹と顔を合わせることは無いに等しい。
それは彼女も同じことで、極稀に会っても簡単な挨拶を交わす程度。
それでも義妹は、会うと凛とした態度をとりつつも笑顔を向けてくれた。
レムオンが皮肉を言うと、子供のように唇を尖らせる。
色とりどりの花のように、ころころと変わる表情。

彼女には、癒される気がする―――。
最も、こんなことは本人には絶対に言えないし言う気もないのだが。

花瓶の中の花一輪を摘み上げると、指先でくるくると回してみせる。
義妹の姿を思い浮かべながら。

ふと我に返ったとき、目を細めて口元には微笑を湛えている自分に気がついた。
俺らしくもない、と独りごちるとすぐに嘲笑に変わり、花を花瓶に戻す。

思い浮かべた義妹の姿を振り払うかのように、再び書類に没頭することにした。

花瓶の花は、静かに微かに揺れていた。

 

fin



後書き↓

レムオン×梅之助んちのミイス主・ルイン で書いてみました。
だんだんジル小説に慣れてきたような感じです。
FE聖戦小説と平行して書いてたのが、イイ刺激(?)になったのかも。



07.03.24

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