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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 歩み始めた先は 

漆黒の長い髪は風になびき、闘志を秘めた瞳は藍色に輝く。
舞うようなしなやかな動きで繰り出される剣戟は、まるで流れる星のように鋭く光る。

ノイッシュは彼女の戦う姿を、息を呑んで見守っていた。
女性でありながら、剣士として十分過ぎるほどの力を持つ彼女に、戸惑った。

 

「…囲まれたか。」
極僅かな空気の変化に気付き、足を止めた。
生い茂った木々たちの陰に隠れ、姿は見えないが、確かに人の気配がする。
ゆっくりと近づいてくるそれは、一人ではなく複数のもの。
アイラは浅く息を吐くと、目を閉じ、剣に手を掛けた。

ぱきり、と真後ろから枯れ枝が折れる音がした瞬間。

敵兵から振り下ろされる剣よりも早く、アイラの剣は相手の横腹に食い込んでいた。
それが合図かのように、潜んでいた敵兵たちが一斉に飛び掛ってきた。

 

戦の音を聞きつけたノイッシュがアイラの姿を目にした時、既に三人の敵兵が倒れていた。
しかし、まだ二人の敵兵がアイラを挟んでいた。

同時に二人を相手にしても、互角以上の戦いを見せるアイラに目を奪われる。
助けに入ることが無駄だと分かっていて、ノイッシュは唇を噛む。
杞憂だと理解していても、危ぶみ気遣う目で彼女の姿を追う。

やがて残っていた二人も地面に伏した。
アイラは剣を一振りすると、鞘に収めた。

彼女の無事な姿に安堵する。
ふと、アイラの更に奥にある薄暗い茂みに目を凝らす。
「…!」
それが弓兵で、構えられた矢の先にアイラがいるのを確認した瞬間、ノイッシュは馬を走らせた。
「アイラ王女!!」

「!! ノイッシュ!?」
アイラが叫んだのと、矢が放たれたのは、ほぼ同時だった。
ノイッシュの操る馬はアイラの後ろに走り込み、放たれた矢はノイッシュの右脇腹を掠めた。
「くっ…!」
痛みで体勢を崩しながらも、ノイッシュは弓兵に向かって持っていた手槍を投げた。
茂みの向こうから低く呻く声が聞こえた。

 

治療を終え自室に戻ったノイッシュのもとに、アイラが訪れた。

一国の王女が、他国の一兵士の部屋を訪れた―――
そのことに少々驚いた表情でノイッシュは出迎えた。
部屋の奥には、アレクとアーダンも居た。
「傷は大丈夫か?ノイッシュ…。」
アイラは沈んだ面持ちで、背の高いノイッシュの顔を見上げていた。
普段の凛とした雰囲気などなく、藍の瞳は翳りを帯びている。
ノイッシュは、大丈夫という意味も込めて微笑んだ。
「ご心配をお掛けして、申し訳ありません。」
礼儀正しく深々と頭を下げるノイッシュに、アイラは狼狽した。
「いや、謝らなければならないのは私の方だ。怪我をさせてしまい、すまなかった。」
「そんな、勿体無いお言葉です。アイラ王女が無事で何よりです。」
一瞬の沈黙の後、アイラの表情が緩んだ。
「………ありがとう。」

 

自室へと向かう足取りは軽く、窓の外を見つめる表情は晴れやかだ。
ノイッシュが無事で良かったという安堵の気持ちと、そして。
彼の、誠実で真面目な人柄に好感を持った。
傷を負わせてしまったが、あの時、自分を庇ってくれたことが嬉しかった。

 

扉を閉めて振り返り、ノイッシュは首を傾げた。
「…どうかしたのか?二人とも。」
「ノイッシュ君の怪我は、そういう事だったのか~。」
頬杖をついて薄笑いを浮かべているアレクに、アーダンが続く。
「真面目な振りして、実は既にお目当ての女性を見つけているとはな。
 ノイッシュもなかなか、隅に置けないヤツだ。」
そう言うと、アレクと顔を見合わせて笑い合う。
ノイッシュはますます、首を傾げた。
「…男が女性を助けるのは当たり前だろう?」
はた、と二人の笑い声が止まる。
「…。」
「…。」
アレクとアーダンは顔を見合わせ、同時に肩を竦めた。
「やれやれ。やっぱりノイッシュはノイッシュだったってわけだ。」
「お前の真面目さには、ほとほと感心するよ。」
「…は?」

 

シアルフィ公国の騎士ノイッシュと
イザーク王国の王女アイラ

二人の気持ちは、歩み始めたばかり。

 

fin



後書き↓

突然、ノイッシュ×アイラが書きたくなって書いちゃいました。
(このサイトは、きっとユリアとアイラに偏ってる。)
書いてるうちに、ノイッシュラブになりました。

梅之助のノイッシュのイメージは、騎士道を重んじ、どこまでも真面目一直線な感じです。
それ故、恋愛にはドンカン。疎いんです。
実はこの話、続きます。(予定…。)



07.02.28

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