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こころにぽっかりと穴があいたような
今の少女の心境は、まさにその言葉がぴったりだった。
ロストールの宿屋の一室に少女はいた。
ベッドで上半身を起こし、両手に抱えているのは「虚無の剣」。
―――そう、これは虚無の剣…。
ぼんやりとした頭はそれを認識しているのに、自分がどうしてそれを手に入れたのかが思い出せなかった。
闇の門の島にいて、傍らにはヴァイライラとヴィアリアリがいて。
それから―――。
傷だらけの自分、その目の前に、この剣が突き刺さっていた。
「そうそう。闇の神器を探しにきたのよ。」
彼女達に言われると、そういえばそうだったと納得したものの。
窓から月明かりが差し込む静かな夜。
どうしても寝付くことが出来ず、何度も何度も寝返りをうつたびにサイドボードに載せていた虚無の剣が目に入った。
その剣を見るたびに、その剣のことを考えるたびに、心が妙にざわざわと音を立てているのはなぜだろう。
ぼんやりとした頭に、心にぽっかりと穴が開いたような、この感覚はなぜだろう。
なぜ、なぜ、なぜは尽きない。
―――どうして、涙が出るの?
虚無の剣を撫でていた手が止まり、ぽたり、ぽたり、と頬を伝い落ちた涙が剣の上を滑っていった。
涙はとめどなく溢れ、頬を伝い、シーツをも濡らしていった。
悲しい、怖い、せつない、辛い、懐かしい、愛しい―――?
この感情がすべて当てはまるような心地がして、今はただ声を殺して泣くしかなかった。
泣いて、泣いて、ふっと何かに気がついたように顔を上げた。
今から散歩に出かけよう。
気晴らしになるかもしれない、そんな突然の思いつきが、しかし心を突き動かすのはなぜだろう。
ベッドから降りて外套を羽織った少女は、夜の外へと飛び出していった。
fin