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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 笑顔のチカラ 

大企業である神羅の中にある、「エリート社員集団」と呼ばれるタークス。
そこでの仕事内容は様々あるが、社会の影で暗躍することが多い。
タークスの一員であるレノは、自分の仕事が好きだった。
実力がものを言う仕事。
その実力を有している彼にとっては、まさに天職ともいえるのかもしれないが、楽な仕事内容ばかりではない。
どんな内容であれ冷酷にこなすことができるが、辛くないことは少なかった。
辛い任務の後は、足が重い。

 

レノが教会へ赴いたのは、任務を終えてから二日後の午後だった。

 

目の前に立ちはだかる木製の扉は、古臭いくせに、今のレノにはやけに大きく見えた。
鉄の扉に触れているような感覚でそれを押し開けると、空中を漂っていた埃が勢い良く舞い上がった。
陽の光で反射した埃がきらきら揺れるのには目もくれず、一歩踏み出そうとした、その瞬間。
「レノ!!」
教会の奥から少女の明るい声が響いた。
いつもと違う様子に驚いて目を丸くしたレノのその視線の先には、男の名を呼んだ少女――エアリスが立っていた。
扉を開けたときの空気の流れのせいなのか、白いスカートがふわりと靡いていた。
“いつもと違う様子”とは、エアリスがレノの名を呼んだときの、明るい声のトーン。
そして、視線の先にある眩しいほどの笑顔。
「―――………。」
その笑顔を見て、自分でも不思議に思うくらい安堵したのが分かった。

思わず見惚れたように入り口で突っ立っていたレノだったが、エアリスがもう一度名前を呼んだのにはっと我に返った。
二、三度瞬きした視線の先の彼女が、手招きしている。
「こちらに来い」という合図なのだろう。
これも、“いつもと違う様子”だった。
ぼーっとしていたのを悟られないように、ごほん、と埃にむせたような空咳でごまかして、歩みだした。
手招いてはいたものの、レノのことを待ちきれないエアリスはぱたぱたとレノの傍へと駆け寄り、
「レノ!待ってたの!」
そう言いながら、男の腕をひしと掴んだ。
“いつもと違う様子”にまた、小さく、どきりとレノの胸が鳴った。
目の前にいるエアリスは、まさに「目を輝かせて」という表現が似合うような表情で自分を見上げている。
「…なんだよ、騒がしいぞ、と。」
ダルそうに発した声は、二日前の自分のそれよりも若干抑揚がついていた。
エアリスの腕がぐいぐいとレノの腕を引く。
「来て!」
早く早く、と今にも駆け出しそうな勢いの彼女に引っ張られ、気だるそうな表面とは違い、内面は目を白黒させていた。
彼女の嫌いな神羅の一員である自分にこんなに好意的で積極的な彼女は、今まで見たことが無かったから。

「なんだよ。」
引っ張られてやってきたのは、教会の真ん中。
真上の屋根が崩れ落ちてそこから太陽の光が差し込み、そのためそこにだけ花が咲いているのである。
花壇と呼べるほど立派なものではないが、エアリスが毎日丹精込めて世話をしているので、ある程度のカタチは整っていた。
「これ!見て!」
弾むような声で、くいくいとレノの袖口を引っ張りながら、エアリスは地面に向けて指差した。
彼女が指差す場所へ、腰を折りながら視線を向けると、
そこには、茶色い土からぴょこんと小さな若葉色の芽が出ていた。
「今日来たらね、新しい子がいたの!」
植物を「子」などと呼ぶ彼女の言い方に、内心微笑ましいような違和感を覚えながらも、
「…ふぅん。」
植物にあまり興味のないレノはそうとだけ答えた。
しかし、エアリスはたいして気にした様子も無く、レノの隣にしゃがみ込んだ。
隣にいる男がこんなことで嬉しそうにすることはないと、知っているのだ。
「昨日は、まだいなかったの。でもね、今日来たら、こうして顔を出してたの。」
それが嬉しくて、とエアリスの伸ばした手が小さな芽に触れた。
つん、と優しく弾くと、ふるふると微かに震えた。
エアリスの嬉しそうな声が言葉を続ける。
「どうしても見せたくて、見せたくて。ずっとね、レノを待ってたの。」
小首を傾げて、にっこりと笑みを向けられて―――

心の中に一筋の光が射したような感覚を覚えた。
何故彼女の笑顔を見て安堵したのか、その理由が分かった。

教会の真ん中の、そこだけ太陽の光が差し込む場所。
薄いベールのような太陽の光の下で見る好きな女の笑顔は

―――こんなにも、良いものだったのか。

あの任務を終えた後の喪失感。
気持ちの切り替えは早い方だったが、二日経った今日まで、心の奥底で引きずっていた。
それが、少女――好きな女の笑顔ひとつで癒されてしまうとは。

「…元気、ない?どうかしたの?」
今日はなんだか言葉数の少ないレノを訝しがり、エアリスが再び小首を傾げ、尋ねた。
大きなエメラルドグリーンの瞳が、まっすぐにレノを捉えている。
眩しいものでも見ているかのように目を細めていたレノだったが、ふるふると首を振り、
自身もまっすぐにエアリスを見つめ返した。
「――そうか?いつも通りだぞ、と。」
その声は確かに、いつも通りの声に変わっていた。
清々しい気分だったので、ぐい、と力強くエアリスを抱き寄せた。
ふわり、と太陽のにおいがした。

 

fin



あとがき↓

雑記に載せたエア絵(http://torizakki.img.jugem.jp/20090528_492383.jpg)から、
このお話のイメージが浮かびました。
レノが扉を開けたのに気づいて振り返り、満面の笑みになる3秒前、って感じで。



09.05.30

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