[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
乾いた大地に黄色い砂埃が舞う。
陰鬱とした曇り空。
まるで、これから始まる事柄に不吉なことが起こる、とでも言いたげな色。
空の色ひとつでも士気に関わる。
それが、実戦経験の浅い若い兵士達の間であれば尚更だ。
ずらりと整列している兵士達の顔を見ながら、カルラは思った。
進軍前のひと時。
カルラは必ず、兵士達全員を並ばせる。
そして、彼ら一人ひとりの顔を眺めて歩くのだ。
後ろに並んでいる者たちは、実戦経験のある兵士達だった。
陽に焼けて浅黒い肌にぎらりとした鋭い目つき。
長い戦いを経て、精悍な顔つきになっている者もいれば、うっすらと頬がこけている者もいる。
どちらも、戦争を知った者たちの顔だ。
そんな彼らの前に並んでいるのは、彼らと対照的な顔ぶれの者たちだった。
真っ直ぐに前を向き凛とした表情でいる者もあれば、青白い顔の者もいる。
以前までは一般市民だった者たちがほとんどなのだから、当然といえば当然だ。
カルラは一人の少年兵士の前で立ち止まった。
きりりとした表情の少年は、びくり、と身体を微かに震わせた。
「怖い?」
話しかける。
声のトーンは明るいものだったし、口元には笑みさえ浮かべている。
普段のカルラは、今この場には全くそぐわない。
少年は起立の姿勢を正した。
「い、いいえ!」
声は上ずっていた。
「そんな緊張せんでもいいよー。」
からからと笑うと、それが逆に刺激になったのか、少年の顔色が青くなった。
握っている拳がかたかたと小さく震えている。
「いいこと教えてあげる。」
顔を近づけ、カルラはいたずらっぽく笑った。
少年は、ただ真っ直ぐに前だけを見つめている。
「恐怖をね、自分のものにすんのよ。」
「………。」
「笑っていればいいのよ。笑って、恐怖とかを味方にすんの。」
恐怖――戦争での恐怖といえば、命を奪い合うこと、すなわち“死”だ。
「死神は、いつも笑ってるもんでしょ?」
『青い死神』と異名を持つこの少女。
少年兵士は、肌が粟立つのを感じた。
fin