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部屋の中は、暖色系で揃えられているらしかった。
暖炉の火がぱちぱちと小さな音を立て燃えている。
赤い絨毯に赤いカーテン、ベッドを覆っている赤い天幕。
その上、ゆらゆらと揺れる燭台の炎が部屋全体をほんのりと赤く染めていた。
窓の外を覗けば一面の銀世界。
中と外のコントラストが美しかった。
「ブリギッド。」
部屋の中には、ブリギッドと彼女の名を呼んだ男――ホリンの姿。
向かい合って椅子に腰掛けている二人の間には小卓があり、その上には空いた酒瓶がふたつ。
二人が手に持つワイングラスには、葡萄酒が入っていた。
「なに?」
頬を朱色に染めているブリギッドは、小首を傾げてホリンを見つめた。
グラスの中身に視線を落としていたホリンは、真っ直ぐに視線を彼女へと向けた。
「好きなんだ、お前が。」
ふふ、とブリギッドが笑った。
「嘘ばっかり。」
「嘘じゃない。」
「酔ってるの?」
「酔ってない。」
ホリンの青い瞳は、ただ真っ直ぐにブリギッドを見つめている。
その瞳に一瞬だけ心臓が小さく飛び跳ねたので、ブリギッドはグラスへと目を背けた。
グラスの中の葡萄酒は、彼女の鼓動に合わせるかのように小さく波打っていた。
「信じられない。酔ってるんでしょう?」
「酔ってない。」
――いや、と呟いて
「酔ってる。酔ってなきゃ、こんなこと言えない。」
一気にグラスの中の酒を飲み干した。
「好きだ、ブリギッド。」
「………。」
俯いた彼女の額にかかる金色の髪。
伏せられた長い睫が影を落としている。
瑞々しい紅い唇はきゅっと結ばれている。
酔いのせいかそれとも男のせいか、頬は朱色に染まり、夜着の間から見える白い肌は燭台の炎に艶かしく彩られている。
そして、元来彼女の持っている気高い雰囲気。
美しい、とホリンは思った。
「明日になったら忘れてるわ。」
心の中では動揺しているのを悟られないように、あくまでも明るく努めて言う。
ホリンの空いたグラスに葡萄酒を注ごうと、酒瓶に手を伸ばした。
「明日になっても変わらない。」
酒瓶へと伸ばされた手を掴む。
びくり、と強張った手が逃れないように握り締め、口元へと引き寄せた。
燭台の炎に紅く彩られた白い手の甲に、そっと口付ける。
「ホリン。」
「愛してる、ブリギッド。本当だ。」
ブリギッドの琥珀色の瞳がホリンの顔を捉える。
彼女の心に合わせるかのように、燭台の炎が小さく揺らいだ。
fin