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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 夜空の偶然 

見上げた夜空はミッドガルのそれよりも綺麗だった。

可愛らしいランプが並ぶ街並み。
家々から洩れるやわらかなひかり、賑やかな声。
雰囲気すらも、ミッドガルと全然違う。
エアリスの足元は、周りの景色に心が踊っているのを表しているかのようだった。

ちょっとだけ一人になりたくて、仲間には内緒で出てきてしまった。
ただ、なんとなく、一人になりたくて。

――本当?

自分自身に問いかけてみる。

――うそ。本当はね。探してるの。

すれ違う人、追い越してゆく人、たたずんでいる人。
周りの人を眺めながら、エアリスは心のどこかである人の姿を探していた。
いるわけない、いるわけない、と思いつつ。
視線は無意識に、だけど願うように似た人の姿を追った。

 

人気の無い街路地にさしかかったとき。
エアリスは我が目を疑った。
特殊な制服を着た三人組の後姿。
その三人に向かい合うようにして、こちらを向いて立っているスーツの男。
石化でもしたかのように立ち竦んでいるエアリスを、男がちらりと見た。
目が合った瞬間、エアリスは物陰に隠れた。
「――じゃ、お前らは先に行ってろ。」
「了解!」
話し声の後に聞こえてきたのは、奥へと走り去っていく足音。
そして、こちらへと近づいてくる足音がひとつ。

「……おお。」
まさか、と思ったのだろう。
スーツの男――レノはほんの少しだけ目を見開き、
「久しぶりだな、と。」
「…ほんと、ね。」
レノの姿を見つけた瞬間に跳ね上がったエアリスの心臓は、どきどきと波打ったまま。
今だって、この音が聞こえるんじゃないかというくらい高鳴っている。
嬉しくて嬉しくて、つい頬も緩んでしまう。
「…偶然、だね。」
ああ、と答える代わりにレノは左右を見回し、
「…おねえちゃん、一人?」
「…うん。」
じゃあ、と言うレノの瞳がエアリスのそれを捉え、そのまま顔が近づいてきた。
目を逸らすことができず、ごくり、息を呑む。
「捕まえちゃうよ――と言いたいところだけど、只今任務中、と。」
すっと顔が離れた。
ほっとしたかのような、それとも期待はずれとでもいうような、小さな息を吐く。
「…あ、そう。」
「じゃあね。」

「待って!」
踵を返したレノの腕を掴んでいた。
立ち止まり振り向いたレノの瞳と重なる、エアリスの瞳。
まるで地上に落ちた星のよう。
「…会えて、とっても、嬉しかった…。」
エメラルドグリーンの瞳が微かに潤んだように見えたのは、夜の光に照らされているからだろうか。
「………。」
ゆるゆるとエアリスの頭が下がってゆく。
頬が微かに色付いているのも、夜の光のせいだろうか。

不意に、エアリスの肩にレノの手が触れた。
瞬間、心臓が飛び跳ねて体が強張った。
そのまま、レノは俯いたエアリスの耳元に唇を寄せて、
「この先の店で。」
――待ってて。

エアリスがはっと顔を上げると、レノはもう背中を向けて走り出していた。

相変わらず胸はどきどきと高鳴っていて、組んだ両手の指先が震えている。
密かに願っていた偶然の出会い。
「…レノ。」
夜の闇へと消えてゆく背中を見つめながら男の名を呟いた。



fin



あとがき↓

いつもはエアリス10代のお話ばかり書いていましたが、今回のこれは、パラレルなゲーム中の出来事です。



08.10.15

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