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久しぶりの休息に、リズはレーグと連れ立って街中を歩いていた。
故郷ノーブルでは無かった都会風の活気の良さに、リズの心はうきうきと飛び跳ねている。
「あっ、レーグ、あのお店も見てみよう!」
さきほどから繰り返されている光景。
無邪気な笑顔を見せるリズと、落ち着いた雰囲気のレーグ。
見た目から考えて恋人同士のように見えるかもしれないけれど、まるで小さな子供とその保護者のよう。
「あれ、かわいいなぁ。こっちもいいなぁ。」
店の外のガラス窓からずらりと並んでいるアクセサリーを見て、リズは楽しそうに目を輝かせている。
名のある冒険者ではあるけれど、その様子は周りの年頃の少女と何も変わらない。
はたと隣に並んで同じくアクセサリーを覗き込むレーグが無言なのが気になった。
「あ、ごめんね、レーグ。」
長距離移動ばかりの旅の間の、束の間の休息。
弟のチャカはここぞとばかりに宿屋で爆睡中だし、フェティは一人でどこかへ行ってしまったし。
一人でいるのも暇だし、ということで剣の修行中だったレーグを誘ってみた。
「構わぬ。」と言ってくれた彼だったが、本当は行きたくなかったんじゃないか―――
と、そんなことを今更気がついて、一人だけ楽しそうにしていたのが恥ずかしくなる。
「何故、謝る?」
「え、いや、つまんないのかな、って…。」
リズを見下ろすレーグの表情が無表情なのはいつものことなのに、今はなんだかひどく辛い。
元々、楽しいとか嬉しいとか悲しいとか、感情を面に出すタイプではないとわかってはいるけれど。
しゅんと肩を落としたリズを見て、レーグはふと笑みを漏らした――ような気がした。
そんな気がしたのは、声のトーンがいつもよりも優しげだったから。
「うぬはよく表情が変わる。」
「え?」
と顔を上げると、いつもよりも優しげな目をしたレーグの顔。
――気のせいじゃない、かも。
「見ていて飽きない。」
「………。」
レーグがその言葉をどういう気持ちで言ったのかはわからない。
少なくとも、恋愛に鈍感な彼はそういう気持ちで言ったわけではないだろう。
しかし、リズの顔はほんのりと赤く染まっている。
それだけその言葉には特別な威力があるということを知らないあたり、
(本当に、鈍感なんだから!)
レーグの一言でほっと安堵する気持ちよりも、どきどきと高鳴る胸の方が上回っていた。
fin