『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
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幸せな罪と罰
口の中に鉄の味が広がっている。
――これが、血の味か。
イシュタルは引きつった笑みを漏らした。
腹部に受けた傷がずきずきと痛む。
そっと手を伸ばしてそこに触れると、生暖かい感触があった。
草を踏みしめる音が近づいてくる。
目だけを動かして空を見つめると、ぼんやりとした視界に眩しい蒼い色が映った。
「…イシュタル。」
その声の主は――
「…セリ、ス…公子…。」
ほんの一言を発するのも辛かった。
それでも、イシュタルの心は言いようのない奇妙な嬉しさで満ちていた。
「イシュタル。」
もう一度名前を呼び、セリスは彼女のそばに跪くと背中に腕を回して優しく抱き起こした。
すぐそばに、互いの顔。
蒼い瞳と赤い瞳が、しっかりと重なった。
「…私は、主の下で、数々の罪を…犯してきましたが…。」
ゆっくりと紡いでいく言葉を、セリスは黙って聞いていた。
ぎゅっと握られる右手が嬉しい。
そのおかげで、意識を手放さないでいられる。
「…最も重い、罪は…。」
「うん。」
「貴方を…愛してしまったことです…。」
主がいたのにも関わらず――。
そんな罪深い自分自身の不甲斐無さと、最期に想いを伝えられたことの嬉しさで、
イシュタルの目から一筋の涙が伝い落ちた。
(こうなってしまったけど、貴方を思っている間は幸せだった。)
心の底からそう思えた。
セリスが、暖かい涙を優しくぬぐった。
「僕の心を奪った罰として、イシュタルはずっと僕の傍にいてもらうよ。」
優しい音色で響く罰。
滲む視界の中で、セリスが微笑んだのが見えた。
fin
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