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ふわふわとまどろむ感覚の中に、全身を包み込んでいる温もりだけがはっきりと伝わっていた。
静寂に包まれた真夜中の、広い部屋の中にあるベッドの上。
衣擦れする音を立てて、ディアドラは何度も何度も寝返りをうった。
もちろん、本人は目を醒ましているわけではない。
心地良い場所を求めて、ベッドの上を無意識にころころと転がっているだけ。
全身を包み込んでいる、今以上の温もりの場所。
こつん。
額が何かにぶつかって、そこでようやくディアドラはほんの少しだけ目が醒めた。
重いまぶたをうっすらと見開くと、目の前にはシグルドの顔。
すやすやと規則正しい寝息が聞こえてくる。
ゆったりとした動作で、ディアドラはシグルドの額にかかっていた前髪を撫でた。
「…んん…?ディアドラ…?」
目を醒ましたのか、それとも寝ぼけているだけなのか。
シグルドの左腕がディアドラを探るようにシーツの上をぱたぱたと彷徨い、
彼女の細い腰を探り当てると、腕はまた力なく、だけど安堵したかのように落ち着いた。
「ディアドラ…寝相、悪すぎないかい…?」
ちょうど耳元でささやかれる声。
え、と顎をちょっと上げてみたけれど、シグルドはやはり目を瞑り眠っているのか起きているのか。
「違います、ベッドが広すぎるんです。」
だから離れないように、と。
ディアドラはシグルドの胸元に潜り込むように身体を摺り寄せた。
シグルドが彼女の額に唇を寄せる。
お互いの鼻先には、甘いしゃぼんの香りが漂う。
全身を包み込む温もりは、よりいっそう強まった。
最上の心地良い場所が見つかって、ディアドラは静かに目を閉じた。
fin