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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 刻まれた名前 

長く艶やかな黒髪が風になびく。
アイラはマーファ城の屋上にいた。

シャナンと共に、この軍に入って数日が経った。

未だに、馴れない。
雰囲気にも、人々にも。
シャナンはすっかり打ち解けているようだが、アイラはどうしても馴染むことができない。
意識的に、距離を置いてしまう。

今、グランベルとイザークは敵対の状態。
しかし、その真相を知っているからこそ、距離を置いてしまう。

イザークは、兄上はどうなってしまったのか。
そのことばかりが頭を埋め尽くす。

「ここにいたのか。」
突然の男の声にアイラは振り返った。
青い髪を後ろにまとめている男……名前はわからない。
顔は見たことがあるし言葉も交わしたような気もするのだが、覚えていない。
「……なんだお前は。」
アイラは不機嫌そうに答えた。
どうしても馴染むことができないのだから、この際できるだけ関わらない方が楽だ。
そう思っていた。
男は何の迷いもなくアイラの隣に並んだ。
「どうして隣に来る。」
「別に。」
「用がないならさっさと行け。」
眉根を寄せて男を見上げる。
こうして並んでみると、背が高いのがわかった。
この感覚に、どこか懐かしさを覚える。

 ……兄上くらいだろうか……。

「お前、なんでそう無愛想なんだよ……ん?」
男は、アイラがじっと自分を見つめているのに気がついた。
「どうかしたか?」
はっと我に返ったアイラは顔を赤くして目を逸らした。
「な、なんでもない。」
男は不敵な笑みを浮かべながら言う。
「さては俺の横顔に見惚れてたな?」
「はぁ!?何を言ってるんだお前は!?」
さっきよりも顔を真っ赤にしてアイラは抗議する。
その様子に男は吹き出した。
「冗談冗談!」
本気にするなよな、と男は大笑いしている。
「……………。」
アイラは拳を震わせて睨み付ける。

 なんなんだ、この男は…!

今までこんな男を見たことがあっただろうか。
少なくとも、祖国にはいなかった。

男は笑いながら言った。
「お前も少しは可愛いところがあるんだな。」
その言葉が一瞬理解できなかった。
「……?」

『お前も少しは可愛いところがあるんだな。』

 ……可愛い……?

「かっ、可愛い、だと……っ!?」
顔が熱い。
自分でも、今、顔が真っ赤になっているのがわかってしまう。
「お前っ……ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ふざけてなんかいねーよ。」
そう言うと、男は突然まじめな顔になった。
その顔に、アイラの心臓が小さく跳ねる。
「お前さ、いつも難しそうな顔してるんだよな。」
「……は?」
ここ、と男はアイラの眉間に人差し指を軽く当てた。
「いっつもここに皺寄ってるんだよな、お前。」
アイラは一瞬目が点になって男の顔を見つめていた。
「……余計なお世話だっ!」
男の手を振り払う。
「何が言いたいんだ?」
アイラが睨み付けながら尋ねると、男は頭をかいた。
「お前、全然他のヤツと話とかしねーじゃん。」
「…する必要がないからしないだけだ。」
「だからって、なんでもかんでもここに溜めておくのは良くねぇんじゃねーの?」
男は今度は自分の眉間に人差し指を当てた。
「……。」
「何かあるんだったら皆に話せば良い。」
アイラの顔を覗き込む。
「そうすれば少しは気が楽になって、ここに皺寄ることもねーと思うけどな。」
そう言ってまたアイラの眉間に人差し指を軽く当てる。
当てられた指先は温かく、当てられている眉間はくすぐったい。
「……。」
アイラは男の顔をじっと見つめた。
男は軽く微笑んでいる。
その微笑を見て、少しだけ、気が楽になったような気がした。

アイラは男に背を向けると、すぐにでもその場を立ち去ろうとした。
「レックス。」
「……?」
アイラは立ち止まり、振り返った。
男は意地悪そうな笑みを浮かべている。
「俺の名前、レックスっていうんだ。」
「……だからなんだ。」
睨み付ける。
それでも男―――レックス―――は少しもたじろいだ様子はない。
「名前くらいは覚えてくれよな、ア・イ・ラ。」
「……。」
踵を返し、また歩き出した。
「話せて楽しかったぜ!」
後ろからレックスの声がする。
しかしアイラは振り返らず、その場を足早に去った。

心臓の鼓動が早い。

 レックス……レックス……。

心の中で名前を繰り返し呟いてみる。
と同時に、レックスの顔を思い浮かべる。
意地悪そうに微笑んだ顔と、優しく微笑んだ顔。
自分の心の中に、レックスの名前と顔がしっかりと刻み込まれた。

『話せて楽しかったぜ!』

最後にレックスが言った言葉を思い出す。
認めたくは無いが、少しだけ嬉しかった。

 また、話が出来るだろうか・・・。

 

「レックス!どこにいたの?」
屋上から戻り、廊下を歩いているとアゼルが歩み寄ってきた。
「屋上。」
「屋上?何しに?」
レックスはアゼルの横を通り過ぎた。
その後ろをアゼルがついて来る。
「ちょっと親交を深めようと思ってな。」
「なにそれ?」
きょとんとした顔で、アゼルは首をかしげた。

 いつも一人で、寂しそうなんだもんな、アイツ……。

顔を赤くして睨むアイラを思い出し、自然と顔がほころぶ。

 

レックスとアイラ。
この日、二人が話をしたのはほんの数分の出来事。
しかし、互いの心には、互いの存在が深く刻み込まれたのだった。

 

fin


 


後書き↓

これを書いたのは3年以上も前です。
読み返してみたんですが………うげ。

ということで、ちょこちょこっと手直ししてみました。
(て、手直ししてみたんですよ、これでも…!)(ヒー)

アイラとレックスの出会い(?)。
アイラって、フュリーとはまた違った方向の真面目っこなイメージ。
で、レックスは明るい人柄で、いっつもピリピリしてるアイラが気になっていた、と。
そんな感じ!



07.02.06

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