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通り雨が過ぎ去ったある晴れた日の午後。
ヴェイクは草葉の陰の乾いたところに腰を下ろし、目の前の光景を見つめていた。
「…ヴェイクさん。」
声のした方向へ振り向くと、そこには紺色のローブを着た我が軍の軍師がいた。
「おう、ルフレじゃねーか。」
「こんなところに座って、何をしているんですか?あ…。」
ヴェイクの隣に座ろうと腰をかがめたルフレは、目の前のものに気がついた。
「騒ぐなよ。」
「…小鳥ですね。」
二人の視線の先には、三羽の小鳥が水溜りで水浴びをしていた。
小さな飛沫をあげて一生懸命全身に水を纏おうとしている姿が可愛らしい。
「まぁ、かわいいですね。」
感激の声をあげるルフレに、何故かヴェイクは得意に笑う。
「だろう?いいもん見れたぜ!」
「まさかヴェイクさん、女性たちの水浴びが見られなかったからって小鳥たちの水浴びで妥協するとは思っていませんでした。」
「ちげーって!…って、あ!」
思わず大きな声で突っ込みを入れてしまった時は既に遅く、小鳥たちは驚いて飛び去っていた。
ヴェイクとルフレはその姿を目で追うが、緑の中に溶け込んでしまった。
「あらら、飛んでしまいましたね。すみません、ヴェイクさん。」
「いや、大きな声出しちまったのは俺様だからよ。」
小鳥が飛び去った後の水面は静かに波打ち、やがてそれも消えた。
二人は同時に立ち上がった。
ヴェイクは服についた土をほろう。
「それにしても、意外ですね。」
「なにがだ?」
ふふ、と笑みをこぼしながらルフレは言う。
「小鳥の観察とか、ヴェイクさんにしては珍しいなと思いまして。」
ああ、とヴェイクが声を漏らす。
ルフレの言っていることはよくわかる。
ヴェイクという男を知っている人間ならみんな驚くはずだ。
むしろ自分が一番驚いていると言ってもいいだろう。
「なんかよ、オリヴィエがな。」
「オリヴィエさん、ですか?」
ルフレが首をかしげる。
「あいつが、『綺麗なものを見たり美味しいものを食べたりすると感動するんですぅ』ってな。どんな感じなのか試してみたくなってよ。」
「モノマネの部分は置いといて、なるほど。そんなことがあったんですね。」
それで、とルフレが続ける。
「どうでしたか?小鳥の水浴びを見て。」
「おう、なんつーか、初めて見たからか特に感動したっつーか。たまにはこういうのも悪くねぇな!」
子供のような無邪気な笑顔を見せるヴェイクに、ルフレもつられたように微笑む。
「ヴェイクさんらしい感想ですね。あ、もちろん、良い意味でですよ?」
「なんだそりゃ!」
それは、ある雨上がりの午後のこと。
fin