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『 ファイアーエムブレム聖戦の系譜 』と『 Zill O'll 』中心の二次創作テキストBlog
「 ト リ ソ ラ 」は、原作ファンによる非公認の二次創作テキストBlogです。
版権元及び関係者様各位とは、一切関係ありません。
また、版権元に対する権利侵犯・不利益を目的とするものでもありません。

Japanese Version Only
since : 2007.02.05

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 綺麗で残酷な証明 

書庫の奥から、肖像画が発見されたらしい。
前を歩く家臣の背をぼんやりと見つめながら、書庫へと通じる廊下、セリスは迷っていた。

見てしまえば、諦めがつくだろうか――。
見ない方が、知らないままでいる方が、気が楽か――。

「セリス様は、ディアドラ様に本当によく似ていらっしゃる。」
幼いころから言われてきた言葉。
やがて王となり、昔のディアドラ――母をよく知る家臣たちも口々にそう言った。
正直、そう言われてもあまり実感はない。
母親と共に過ごした時は、それ以外のことも覚えていないほど一瞬で小さな頃だったから。
しかし、似ているといわれて嬉しくないはずがない。
もうここには存在しない両親が残してくれた大切なものだから。
嬉しくて、少しだけ恥ずかしくて、しかし、「似ている」ことは自信へと繋がっていた。
―――彼女と出会うまで。

セリスはもう一人、母に似ているという人を知っていた。

隣を歩く、ユリアだ。
セリスの妹であり、唯一の肉親。

「…どうかしましたか?お兄様。」
視線を感じ取ったのか、ユリアが歩きながら顔をこちらに向けた。
長く透き通るような銀色の髪に、紫色の瞳。
母もそのような容姿をしていたと聞く。

………いや、諦めなくては。
妹への恋慕なんて。

頭の片隅にいる自分が呟いた。
「…ちょっと、緊張してね。」
そう言って笑ってみせると、ユリアもふわりと笑みをこぼす。
「そうですよね、お兄様は…。」
はっと一瞬言い淀んだユリアに気づいて、
「楽しみだよ。」
明るい声で繋げたセリスに、ユリアは今度は少しだけ哀しそうな笑みを向けた。

 

「こちらです。」
家臣に促された先には、既に奥から引き出され白い布で覆われた額があった。
高さはセリスの身長よりも低いが、それでも大きな物だった。
「………。」
いざそれを目の前にして立ちすくむセリスの手に、温かいものが触れた。
「お兄様。」
ユリアの手が、セリスの手を握っていた。
大丈夫、といっているような温もりが伝わってくる。
「…うん。」
セリスが一歩踏み出すと、ユリアも後に続いた。
微かに震える手を伸ばし、柔らかな布に触れ。

見てしまえば、諦めがつくだろうか――。
見ない方が、知らないままでいる方が、気が楽か――。

一気に引き下ろした。

衣擦れの音と、舞い上がる埃。
現れたのは、
「…お母様。」
ユリアの呟きと共にきゅっと強く握られる手。
周りの家臣たちから歓声が上がった。
銀色の髪は緩やかなウェーブがかかっていて、こちらに向けられている紫色の瞳は微笑みを湛えている。

ああ、とセリスは思った。
なんて、綺麗で残酷な肖像画なのだろう。

 

fin



あとがき

お題は「写真」ですが、世界観とかを考えて「肖像画」で。

肖像画が書庫から見つかったのは、ユリウス時代に心ある家臣が捨てたと嘘ついて隠してました、ということで…。



12.06.26

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