[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
5つのお題を、3つのジャンルで挑戦。
【 AIUEOdai 】様からお借りしてきました。
01. あっためて (FE聖戦 : アゼル×ティルテュ)
寒いね、と言うと、寒いね、と返ってくる。
二人で、顔を見合わせて笑った。
指先が赤くなった手をこすり合わせて、はあと息を吹きかけるその姿が、とてもとても愛しくて。
「ほら、もっとこっちにおいでよ。」
隣で小さくなっているティルテュを、アゼルは自分の羽織っている毛布を肩に掛けてやった。
「ありがとう。」
ティルテュは嬉しそうに肩をすり寄せた。
肩から、彼女の存在感が伝わってくる。
「あっ。」
そうだ、と、何かを思いついたティルテュはいそいそとアゼルの腕をくぐった。
「どうしたの?」
アゼルがティルテュを後ろから抱きしめているかたちになる。
彼女の顔があまりにも至近距離にあったので、頬が別の意味で赤くなった。
「えへへ。こうすれば、もっとあったかいよ。」
無邪気な笑みを浮かべながら満足そうにそう言うと、アゼルの腕に頬を預けた。
「…本当だ、あったかいよ。」
腕を回して後ろから彼女を抱きしめると、服の上からでも彼女の体温が伝わってきた。
二人分の熱が、毛布の中に充満している。
02. 僕は酔っている (Zill O'll : ゼネテス&女主人公)
薄明かりが並ぶ夜の街は、窓から洩れる賑やかな音に満ちていた。
その光に照らされた二つの影。
「ゼネテス、飲みすぎではないですか?」
問いかけた少女は、ふらふらと歩く男の腕を取った。
「なぁに、あれくらいで酔っちまうわけないだろう。」
飄々と答えた男――ゼネテスの顔はしかし薄明かりの中でほんのりと朱に染まっていた。
「でも」と少女が言いかけたのと同時に、ゼネテスは急に立ち止まった。
そして慌てたように足を止めた少女を、真正面から抱きしめた。
「ゼ、ゼネテス!?」
大柄な男は少女をすっぽりとその身体の中に収めてしまった。
あまりにも突然だったので、少女は全身の機能がすべて停止したかのように強張っている。
離れようにも、力の差は歴然。
逞しい胸板に寄せた耳には、ゼネテスの胸の鼓動が響いてきた。
「ゼネテス、やっぱり酔ってるでしょう。」
「あー。かもしれねぇなぁ。」
「もう、ふざけてないで離して!」
恥ずかしくて憤慨する少女とは対照的に、ゼネテスはあくまでも飄々としていた。
「もう少し、このままでいさせてくれ。」
「えぇっ!?」
ぽつり、と耳元でささやかれたゼネテスの口調は、いつになく穏やかだった。
「忘れられねぇんだ。」
「………?」
「けど、思い出せねぇんだよ。」
背中に回された両腕に力がこもった、ような気がした。
「………。」
胸板に頬を寄せながら、少女はある女性を思い浮かべ、そっと目を閉じた。
03. ボールが! (Zill O'll : 始まり男主×イークレムン)
冒険中に立ち寄ったアキュリュースで束の間の休息を取ったサフォークは、
イークレムンを誘い街中を散歩していた。
水の囲まれたこの国は、街のどこを歩いても水の姿がある。
その景観を眺めながら、二人は船着場で足を止めた。
イークレムンが屈むと海の水面が沸きあがり、巨大な水蛇・ミズチが顔を出した。
「こんにちは、ミズチ。」
彼女が手を伸ばして鼻先を撫でると、ミズチは嬉しそうに鳴いた。
「ミズチ、元気そうかい?」
その様子を隣で見ていたサフォークがイークレムンに尋ねると、
「そうですね、とても機嫌が良いそうです。」
彼女も嬉しそうな笑顔を見せた。
その言葉どおり、ミズチはよほど機嫌が良いらしく海の中を泳ぎまわる。
「きっと、お天気だから嬉しいんでしょうね。」
暖かな眼差しでミズチを見守る彼女にサフォークも同意したが、
ミズチのはしゃぎように少々不安になってきた。
その予感は的中して、ミズチの尻尾が激しく水面を叩いた瞬間、
大粒の海水が二人目掛けて落ちてきた。
「あ、危ない!」
咄嗟にイークレムンの前に飛び出したサフォークだったが、
二人とも頭から海水を被ってしまった。
まるで大雨の中を歩いてきたかのようにずぶ濡れになった。
「…大丈夫かい?」
腕の中に納まっているイークレムンに声を掛けると、彼女は気にした様子もなく、
くすくすと笑い出した。
「すっかり濡れてしまいましたね。」
こんな状況でも笑っていられるイークレムンにつられて、サフォークも笑い出した。
しかし、すぐに自分がイークレムンを抱きしめていることに気づいた彼は、
慌てて彼女から手を離した。
「ご、ごめん!」
「いいえ。」
彼女はやっぱり、気にした様子はなかった。
「庇ってくださって、ありがとうございます。」
「いや。」
「ミズチからのプレゼントでしょうか。」
「え…?」
その言葉の意味に一瞬どきりとしたが、イークレムンはそれ以上は何も言わず、
ただにっこりと微笑みを返すだけだった。
04. 抱き枕が無いと寝れないんだ (FE聖戦 : フィン&アルテナ)
廊下に並んだ蝋燭の灯がゆらゆらと揺れ動き、辺りはしんと静まり返っている深夜。
通りかかった大接間の扉の隙間から、僅かな光が漏れていた。
こんな時間まで起きているのは誰だろう、と首を傾げたフィンは扉を叩いた。
乾いた小さな音が、夜に混じって辺りに響く。
しかし、ぱちぱちと暖炉の火が燃えている音が返ってきたのみだった。
そっと扉を開けると、暖炉前にある長椅子に人の姿が見えた。
暖炉の火とテーブルに置かれたランプの小さな灯りだけの、薄暗い部屋。
「失礼します。」
声を掛けて歩み寄り、近づく途中でその人がアルテナだと分かった。
「アルテナ様…?」
彼女は、長椅子の背もたれに頭を預け、規則正しい寝息を立てていた。
膝の上にある本は、ページが開きっぱなしになっていた。
読書中に眠ってしまったのだろう、ふとフィンの口元が緩んだ。
すぐ傍に跪き、声を掛ける。
「アルテナ様、起きて下さい。」
「う…んん…。」
眉根を寄せた眼がうっすらと開かれた。
ぱちぱちとゆっくり瞬かれた瞳が、フィンの姿を捉えたようだ。
フィンは優しげな口調で続ける。
「こんなところでお休みされては、風邪を召されてしまいます。」
部屋に戻りましょう、と手を差し出した。
「ん~…。」
眼を細め、まだ眠気から醒めていないような顔でアルテナが手を伸ばした――が、
その手はフィンのそれをするりと通り過ぎて、
「あ、ちょ、アルテナ様!」
フィンの首に巻きついた。
「………。」
「あの、アルテナ様、起きて下さい…!」
「………。」
フィンに抱きついたまま、アルテナは再び眠りの世界に行ってしまった。
(どうしよう、この状況…。)
身動きが取れないフィンは、冷や汗をかいたまま固まってしまった。
翌朝。
アルテナは自室で目を醒ました。
そのことに何の疑問も抱かなかったということは、
長椅子で寝てしまったこと、フィンに起こされたこと、抱きついたこと、
そしてフィンに部屋まで運ばれたことなどの記憶は一切ないのだろう。
「昨日ね、とても良い夢を見たの。よくは覚えていないんだけど…
確かわたしが小さい頃に姿に戻っていて、とても温かかったのは覚えてる。」
嬉々として語るアルテナの後ろで、
(そういえば小さい頃のアルテナ様は、よくキュアン様と一緒に寝ていらしたっけ…。)
父と見間違えたのだろうか。
とにかく。
彼女の幼い頃を思い出し、昨夜のことを思い出し、どぎまぎするフィンがいた。
05. 君が寂しそうだったから (FF7 : レノ→エアリス→ザックス)
教会の古臭い扉を押し開けると、軋んだ音と共に陽の光に照らされた塵が舞う。
視線の先には、小さな花畑があって、それを世話する一人の少女がいた。
少女――エアリスは扉が開いたのと同時に振り返ったが、
入ってきたのがレノだとわかると眉をしかめてみせた―――
というのがいつものお決まりのパターンだったのだが、
今日は、入ってきたのがレノだとわかると肩を落としたのが気になった。
「久し振りだな、と。」
そう言って近づくにつれ、エアリスの視線はゆっくりと下がっていった。
正面に向き合ったときには、すっかり俯いていた。
「なに、どしたの?」
顔を覗き込もうとすると、そっぽを向いてしまった。
静寂が流れる。
「…入ってきたのが、俺で悪かったね、と。」
意地悪くそう言った言葉の裏には、ちょっとだけ嫉妬心があった。
エアリスが口を開く。
「どうして…。」
彼は、帰ってこないの?
そう問おうとした言葉は途中で消えて、肩がかすかに震えていた。
意地悪してしまった罪悪感と、自分じゃない誰かを待ってる嫉妬心と、彼女への想いで。
気がつくとレノはエアリスを抱き寄せていた。
腕の中で、細い肩を震わせてすすり泣く声が胸を締め付ける。
こんなにも脆い存在だとは思わなくて、壊れてしまわないように抱きしめた。
あとがき↓
1.アゼルは、くっつくまえはティルテュの積極さにたじたじだけど、くっついたらお友達のようなバカップルなんだと思うんです。ていうかどんな状況。(08.08.23)
2.女主人公は「誰」と決めてはおりません。ゼネテスって女主人公に簡単にはなびいてはくれなさそうです。(08.11.06)
3.「ボールが!」っていうのは、どのジャンルでも世界観とイマイチ~だったので、ジルの世界で水にしました。結局は、「襲い来るものから女の子を守る!」て感じです。(08.08.24)
4.なんかお題とズレてる…?「抱き枕→安眠・気持ちいい→フィンに抱きつく→安心してすやすや→フィンは抱き枕」ということで。強引!(08.08.24)
5.某動画サイトで、偶然FF7CCのイベントムービーを観ました。ザックスとエアリスがせつなすぎて、胸がきゅんきゅんして、もうね…もうね…!(08.08.23)